なぜハートのキングは「自殺王」と呼ばれるのか?トランプに隠された奇妙な歴史

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トランプの絵札をじっくり眺めたことはあるでしょうか?

キング、クイーン、ジャックはいずれも堂々とした姿で描かれ、一見すると大きな違いはないように見えます。しかし、ある一枚だけ、どうしても違和感を覚えるカードがあります。それがハートのキングです。

ハートのキングをよく見ると、彼は剣を持ち、その刃先が自分の頭に向いているように描かれています。まるで自らを傷つけているかのように見えるこの姿から、英語圏では古くから“Suicide King(自殺王)”という呼び名で知られてきました。

この呼称は、トランプの図柄や歴史を扱う書籍や、カードコレクターの間では、長年語られてきた定番の話題です。

では、なぜハートのキングだけが、そんな不穏な姿になってしまったのでしょうか。

本当に「自殺」を表しているのか?

結論から言えば、ハートのキングが意図的に自殺を表現しているわけではありません。現在もっとも有力とされているのは、「印刷の簡略化による偶然の産物」という説です。

トランプの原型となるカードは、15世紀から17世紀にかけてヨーロッパで広まりました。当時のカードは木版印刷で作られており、細かい線や装飾を正確に再現することが難しく、版を重ねるたびに図柄が省略・変形していきました。

ハートのキングも、もともとは剣を振り上げている姿だったと考えられています。しかし、印刷の過程で剣の柄や腕の一部が省略され、最終的に「刃だけが頭の近くに残る」構図になってしまった。その結果、後世の私たちには「自分に剣を突き立てている王」に見えるようになった、というわけです。

ハートのキングだけが特別な理由

この説だけなら、「たまたま起きた印刷事故」で終わる話です。ところが、ハートのキングには他にも奇妙な“唯一性”があります。

  • 唯一ヒゲが描かれていないキング
  • 唯一、剣を武器として持つキング
  • ほぼ完全な横顔で描かれているキング

他のスートのキングたちは、ヒゲをたくわえ、斧や杖を持ち、比較的正面寄りの顔で描かれています。ハートのキングだけが、明らかに異質な存在なのです。

なぜこのカードだけが、ここまで孤立したデザインになったのか。これについては、現在も明確な答えは出ていません。だからこそ、カード史の世界では今も語り継がれているテーマとなっているのです。

「自殺王」という呼び名が残った理由

興味深いのは、この誤解を招くデザインが、後世で修正されなかった点です。印刷技術が向上した後も、ハートのキングは現在の姿のまま残されました。

理由の一つは、「慣習の力」でしょう。

トランプは世界中で使われる遊具であり、図柄の大幅な変更は混乱を招きます。一度定着したデザインは、多少奇妙でもそのまま受け継がれていく傾向があります。

こうして、「自殺をしているように見える王」というイメージだけが独り歩きし、“Suicide King”という、ありがたくない呼び名が定着していきました。

占い的に見ると、まったく違う意味になる

ここからは、象徴としての読み解きです。

トランプ占いにおいて、ハートは感情・愛情・人の心を象徴するスートです。そのキングであるハートのキングは、本来、

  • 感情を深く理解する人物
  • 思いやりがあり、他人を守る存在
  • 自分の感情を表に出しすぎない王

と解釈されることが多いカードです。

剣が自分に向いている姿も、「破滅」ではなく、感情を外に振り回さず、自分の内側で引き受ける姿であり、
他者のために自分を抑える象徴
として読むことができるのです。

つまり、「自殺王」という呼び名とは裏腹に、ハートのキングはもっとも内省的で、みずからの感情に責任を持つ王とも言えるのです。


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